SEワンタンの独学備忘録

IT関連の独学した内容や資格試験に対する取り組みの備忘録

【読書会】「データ利活用の教科書」を読んだ


データ利活用の教科書 データと20年向き合ってきたマクロミルならではの成功法則」という本を読んだので、レビューというほどではありませんが個人的に印象に残ったところなどを書き留めておきます。

私自身はSEの立場で、実際にデータ利活用を行うようなプロジェクトに参加したことはありませんが、今後関わるような兆しが見え隠れしている状況で、興味本位で手にとりました。

全体を通して

全体を通して、データ利活用の流れに沿って必要になる知識やスキルを網羅的に紹介しているという感じでしょうか。ビジネス・ITリテラシーがそこそこあれば、データ利活用を実際に行っていなくても読み通せるレベルにまとめてくれていたと思います。

営業目線やエンジニア目線などの特定の立場に立って書かれているわけではなく、本当に必要なものを書き出しているようなので、知識領域は幅広く特定の分野にフォーカスしている本ではないです。なので、特定の領域について詳しく知りたい場合に見る本ではないのでKindleの試し読みなどで目次を確認するとよいと思います。
世の中の動向やマーケティングの話から始まり、機械学習などの分析手法、プレゼンまでカバーしてます。

対象者としては以下のような人を想定しているようです。

【こんな方におススメします!】
・データ利活用の業務に関わるビジネスパーソン
・組織としてデータ人材を育成・底上げしたいと考えているマネジメント層
・ビジネスサイドの発言が理解できず困っているデータアナリストやエンジニア、
 データサイエンティスト

引用元:データ利活用の教科書 データと20年向き合ってきたマクロミルならではの成功法則(マクロミル 渋谷 智之)|翔泳社の本

素人目から見るとデータ利活用のためにはこれほど広域な知識やスキルが必要なのかと思いました。

個人的には、私のようにこれからデータ利活用の取り組みに携わる可能性がある場合は、必要なスキル領域の確認し、進め方などの参考になると思います。
既に部分的に関わっている場合には、他の工程を担当している人との共通認識を持つのに使ったり、本書を目次代わりにして自身に足りていないスキル領域を確認、詳細は他の専門書に頼るみたいな使い方もできるんじゃないかと思いました。

本書文中より印象に残ったところ

以下は本書文中より印象に残ったところを記述していきます。文中より引用部は引用体で示します。

日本におけるDX、データ利活用の現状

データは統合したものの、有効活用できていないケースも多いです。最も大きな原因はデータ活用するよりも、データ統合することが目的になってしまった点にあります。

「1.3 データ統合とデータ活用の隔たり」より

BIツールなどの導入を行う際に基盤の構築を起点にというよりは、データを活用する側を起点に進めていくことが重要。
データがまとまっていない状態だとデータ統合でも一定の効果は得られそうだが、「利活用」を行うという観点では不十分という感じか。

データ利活用に必要な知識・スキル

ビジネスに精通した人材が全体を俯瞰し、データ利活用を推進していくことが望ましいです。

「2.2 データサイエンティストに求められるスキル」より

前章の通り、「データ利活用」のためにデータ活用側つまりはビジネス側が主体で進めていくことが望ましいとされている。基本的にはデータの利活用はビジネス課題の解決を行うために行うので。
ちなみにデータサイエンティストには、ビジネス力、データサイエンス力、データエンジニアリング力が求められ、どれかを専門領域として、各領域を最低限理解することが必要とされるらしい。

参考:データサイエンティスト検定 リテラシーレベル | 一般社団法人 データサイエンティスト協会

統計学の有名な言葉に「GIGO(Garbage In, Garbage Out)」があります。ゴミを入れれば、ゴミが出てくるという意味です。

「2.3 データ利活用に必要な知識・スキル」より

素人目にはなんとなく、ツールや解析手法を通して「データ」を分析すればなにかしらの結果は得られそうという感じがしてしまいますが、そのようなことを咎める言葉なのかもしれません。
後から出てくるストーリーを構想するとか仮説をもってデータ分析を行い、そのために必要なインプットの選定も重要となるということでしょうか。
ややもすると、慎重になりすぎてしまったりもしてしまいそうですが、頭の片隅には留めておきたい言葉です。
個人的に結構響いたことばでした。

マーケティング

ニーズとは「満たされていない、もっと満たしたいなどの"○○したい"という結果を求める想い」を言います。ニーズを実現する手段が「ウォンツ」です。

「3.4 マーケティングは「消費者(顧客)理解が全て」」

セオドア・レビットの「ドリルを買う人が欲しいのは穴である」であるという言葉の通り、ニーズからウォンツが発生するものであり、顧客がほしいものが製品やサービス自体であるとはき違えないように。

ちなみにニーズは消費者自身が気づいている「顕在ニーズ」と、自身が気づいていない「潜在ニーズ」があり、顕在ニーズは5%ほどしかないとも。
顕在ニーズはアンケートなどで比較的簡単に抽出できそうですが、簡単に求められるだけにブランドや大規模の勝負になりそう。そのような展開ができない場合にはうまく潜在ニーズにフォーカスしていく必要もありそうです。

新商品が発売されてもすぐに模倣される現在では、未充足ニーズはあまり残っていないのが実際です。そのため、未充足ニーズを「探す」のではなく「作り出す」ことに主眼が移っています。

「3.5 市場環境分析におけるデータ利活用」より

未充足ニーズとは、重要であるが未だに満たされていないニーズのこと。
「作り出す」というのは、現在は重要でないことを重要と気づかせたり、商品者が満足しているラインを引き上げ未充足ニーズを作り出すということ。
製品やサービスが一巡した現在では、ニーズを満たす手段が全くないという状況は確かに少ない気がする。そのような状況で既存の延長戦上の製品やサービスで後から参入するのは確かに難しいという感じもする。
マーケティングなどに疎い人間からすると、ニーズを探すのでなはなく作り出すという明確な言葉として認識できたのは良かった。

仮説思考

筆者の経験では、データ分析のスキルが高い方は「初期段階で、仮設をもとにストーリーを構想するスキルが高い」という共通点があります。

「5.3 データ分析でも「仮説は超重要」」より

先にグラフをたくさん作成して何が言えるかを考えるというよりは、最初に言いたいことを決めてストーリーを作ることが重要で、そのために必要なデータを集め、仮説の検証・修正を繰り返してストーリーを固めていく。
データ分析の費用対効果を考えると確かに後者の方が効率がいいと感じます。

仮説これまでの経験や分析等から想定されるものですが、KKD(勘・経験・度胸)だけでは、仮説の視野が狭くなる可能性があります。

「5.3 データ分析でも「仮説は超重要」」より

センスにもとづいて仮説を考え、それを検証するというやり方は時代に合わなくなってきている。
データが収集蓄積でき、解析手段が発展してきた現代では、KKDとデータの両面からバランスよく仮説をたてることが重要と。

リサーチを活用した1次データの収集

仮説のないリサーチは失敗する」という格言があるぐらい、調査仮説は重要です。アンケートは「仮説を検証したい人に、検証したい項目を聞く場」であり、調査票の作成・集計・分析に大きく影響します。

「8.2 定量調査(アンケート)を企画する」より

市場にアンケートなどを実施する際に、仮説を立てることで誰に何を問うかということが明確になり、深く掘り下げた内容を収集しやすくなる。

アンケートで「何が欲しいですか?」と自由回答で質問しても、新製品・サービス開発に役に立たないことが大半です。

「8.7 アンケートを価値あるものにするために」より

消費者は日々の生活で商品やサービスを考える機会が少ないため当然といえば当然ですが、漠然とした質問にはありきたりの回答になることが多い。前項とも関連してくるが、ある程度回答させる方向性を絞り込む必要があると思われる。