ここ結果発表後はシステムアーキテクト試験の記事ばかり作成していますが、今回が本当に最後です。
今回は2019年10月に受験したシステムアーキテクト試験の午後Ⅰの解答を概ね持ち帰ってきたので、IPAから正式に提示された解答と本番試験の点数を比較して、演習などで行っている自己採点がどの程度信用に足るかを簡単に計測してみようと思います。
過去記事ばかり貼り付けるのもあまり好かないので、本番試験の所感や結果、行った対策などが気になったら「システムアーキテクト試験」のタグで検索!検索!
受験結果
・本番試験の結果
午後Ⅰ:87点
今回の本番試験の結果は87点でした。一般的にはまぁよいと言える結果だったと思います。
ちなみに解答が発表される前、受験してすぐの感覚では7割5分と出しましたが、これは解答速報とかも参照していないのであまり参考にならないでしょう。
結果についての記事は以下にあります。
今回の試験では問1と問2を選択しましたので、その自己採点になります。
問1
設問1
[新サービスを利用するペルソナの作成]について、代表的な人物像に近いペルソナにするために協力を依頼した部署はごこか。本文中の「a」に入れる部署名を答えよ。また、その部署名に協力を依頼した理由を35字以内で述べよ。
・部署名
私の解答 | マーケティング部 |
---|---|
IPAの正答 | マーケティング部 |
配点予想:2点
得点予想:2点
・理由
私の解答 | 健康機器の購入者情報、アンケート情報などの管理、分析を行っているため |
---|---|
IPAの正答 | 体組成計の購入者情報及びアンケート情報を管理しているから |
配点予想:5点
得点予想:5点
【考察】
各部署についての説明を読むと人物像に関する情報を持っているのはマーケティング部で明らか。
理由はそれらの情報管理、分析しているから。
理由については、本文中の言葉を用いて文意が同様であれば、多少文言が違っても減点は考えにくい。
設問2
[カスタマージャニーマップの作成]について、本文中の下線①のような議論を行った狙いを40字以内で述べよ。
私の解答 | 利用者側により近い視点で利用シーンや思考、感情を挙げるようにするため |
---|---|
IPAの正答 | 利用者側の視点から新サービスで必要とされる具体的な機能を考え出すため |
配点予想:7点
得点予想:5点
【考察】
カスタマージャニーマップは表2のようなものとなんとなくの理解。
下線①は「PTのメンバに加えて、社内のペルソナに近い人物を集めてり議論し、」で、その狙いを解答する。ペルソナの作成自体の目的が、本文より利用者側の視点をもつためのものであることが分かり、それに沿った解答にすればよいと思われる。
他の設問に比較して指定文字数が多いため配点は高めに設定。
大きな方針は間違っていないが、着地が多少ずれたため減点とした。
設問3
■(1)
健康増進事業部と営業推進部が提案した健康ポイントに関する機能には、それぞれ狙いがある。一つは、営業推進部の狙いとしてポイントを利用してR社の商品、有料サービスなどを多くの利用者に使ってもらうことである。もう一つの健康増進事業部の狙いを30字以内で述べよ。
私の解答 | オンラインコミュニティを活発かつ継続的に利用してもらうこと |
---|---|
IPAの正答 | 利用者に継続的にコミュニティ活動を行ってもらうこと |
配点予想:6点
得点予想:6点
【考察】
営業推進部の狙いについては自問自答されているため、フォーカスを健康増進事業部に絞る。
各部の説明に立ち戻るとオンラインコミュニティの企画運営が主な業務であり、利用者に関わるオンラインコミュニティに記述を抜き出し、編集すると解答のようになった。
恐らくはコミュニティの継続的利用の旨が記述されていれば減点もされないであろう。
■(2)
表3中のA-4の機能について、計算根拠のデータになる、「b」に入る字句を答えよ。
私の解答 | 健康活動ログ |
---|---|
IPAの正答 | 活動量 |
配点予想:4点
得点予想:0点
【考察】
「b」は本文中では「基礎代謝及び当日の「b」から算出した消費カロリの~」となっている。
文意から当日中に蓄積される本人に関するデータであることが推測される。本文から適切な言葉を選択し解答する。
「健康活動ログ」では範囲が広すぎると思われる。直接のヒントは表2中の「消費カロリ」にひかっければ一意に解答は定まる。
活動量は健康活動ログに包含されており、文章的にも違和感はないが、完全抜き出し型の色合いが強いため「0点」とした。
■(2)
表3中のB-6の機能を新たに抽出した理由を、30字以内で述べよ。
私の解答 | 人物によって一部のデータを共有したくないと想定されるため |
---|---|
IPAの正答 | 利用者によっては、一部のデータは共有したくないから |
配点予想:6点
得点予想:6点
【考察】
「B-6の機能」は「オンラインコミュニティにアップロードするデータを任意に選択できる機能」であり利用者視点での理由を探す。
表3中のコミュニティ活動に関する(A)の思考から解答が導ける。
上記の箇所からある程度言葉が抜き出せていれば、ほぼ正解と思われる。
設問4
[新サービスの機能のリリース方針]について、(1)~(3)に答えよ。
■(1)
一定量のデータの蓄積と有効性検証を行わないと誤った情報を提供しかねない機能として初期リリースの対象外として機能はどれか。表3中の機能IDを用いて答えよ。
私の解答 | B-4 |
---|---|
IPAの正答 | B-4 |
配点予想:4点
得点予想:4点
【考察】
設問中の「蓄積と有効性検証」に着目し、データの蓄積により、効果が発揮される機能を探せばいい。
「膨大な健康活動ログ」の使用を前提とするB-4が適切と判断できる。
不一致は間違いなく0点と予想される。
■(2)
優先順位の設定観点として、本文中の「c」に入る観点を15字以内で答えよ。
私の解答 | 利用者の体験価値 |
---|---|
IPAの正答 | 利用者の健康づくり |
配点予想:4点
得点予想:0点
【考察】
優先順位の設定観点に関する話でこれまで散々話に出てきている利用者に関する観点であるとほぼ確信的に予想できる。
本文中では「機能が新サービスの開発方針である「c」に寄与する~」となっていることから[新サービスの開発方針]の段落まで立ち戻り言葉を探せばよい。
ここまでの予測をもっても外れる。方針の設定としても悪くないと思うが設問的には一意な解答が求められていると考えられる。採点的にやや判断が難しいが厳し目に「0点」とした。
■(3)
短期間で開発可能で、変更がしやすいシステム構造を採用することにした、新サービスの開発方針上の理由はなにか。30字以内で述べよ。
私の解答 | 改善と起動修正により段階的に新サービス機能を拡充させること |
---|---|
IPAの正答 | 段階的に新サービスの機能を拡充させることにしたから |
配点予想:6点
得点予想:6点
【考察】
前問に続き「新サービスの開発方針」に関する問なので、当該の段落からキーワードを探せばよいと思われる。
システム開発の経験があれば設問中の「短期間で開発可能で、変更がしやすいシステム構造」という部分から、本文中の「段階的に新サービスの機能を拡充させ」は結び付けやすい。
「段階的に新サービス機能を拡充」辺りのワードが入っていれば減点のしようもないと考えられる。
問1の自己採点合計
補正前 | 40/50 |
---|---|
補正後 | 40/50 |
【考察】
合格基準の6割のラインで言えば体感難易度としては「易しい」。
「サービスデザイン思考」に関する問題ではあるが、前提の知識はほぼ不要で解答できる。
私の記憶では午後Ⅰでは初の出題であり、情報処理試験全体の傾向として、記述問題の場合は初のテーマでは前提知識は不要であることが多い傾向がある。
設問の多くが、解答の軸が問題文中の言葉を使って作成でき、かつ、その該当箇所の見当がつきやすい。
配点は適当に割り振ったが結果的に50点満点の配点となった。
減点の加減に迷うところはあったが8割は固いと予想される。
問2
設問1
容器管理システムの処理について、(1)、(2)に答えよ。
■(1)
容器倉庫へ入庫可能な容器の容器状態区分の値を全て答えよ。
私の解答 | 未使用、合格 |
---|---|
IPAの正答 | 未使用、合格 |
配点予想:5点
得点予想:5点
【考察】
「容器状態区分の値を全て」答える設問。
対象が全てであるこの手の設問を丁寧に頭から解答するのは時間の無駄になる可能性も高いので、一旦飛ばして「容器状態区分」にマークをつけながら読み進め、ある程度読み切った後に解答すればよい。
部分一致、過不足のケースが無数にありうるため自己採点にはやや困る。
今回は完全一致なのでそのまま配点の点数とした。
■(2)
本文中の下線①で用いる、製品マスタに登録されている情報は何か。表1中の属性名を用いて全て答えよ。
私の解答 | 容器種コード、容器一個当たり標準充填量 |
---|---|
IPAの正答 | 容器種コード、容器一個当たり標準充填量 |
配点予想:5点
得点予想:5点
【考察】
下線①は「どの容器が何個必要か計算し」の部分。
表1中の製品マスタに解答が絞られるため比較的解答しやすい。
総生産量に対して、どの容器を使うか、一つの容器にどの程度充填するかが分かれば必要な容器数はわかるので解答の通り。
採点の観点は(1)と似ているが、設問の意味合いまで読み取れば完答によってはじめて意味をなすため、完答でないと点数がつかない可能性も考えられる。
設問2
[容器管理システムの処理概要]について、(1)、(2)に答えよ。
■(1)
容器回収処理において、HTによる個別読込み時に、数が一致するケースと不一致になるケースがある。それらはどのようなときに起きるか、それぞれ30字以内で述べよ。
・一致するケース
私の解答 | 容器回収場所のゲートアンテナの一括読込みに漏れが発生したとき |
---|---|
IPAの正答 | RFタグの一括読込みで読込み漏れが発生したとき |
配点予想:6点
得点予想:5点
【考察】
設問中の「数が一致、不一致」と本文中の「数が不一致」では時点が違い、特に本番試験中であると文意に混乱させられそうなところであるが、冷静に解答したい。
本部中の「数が不一致」は一括読込み後であり、設問は個別読み込み後を指している。つまりは設問で問われているのは「一致」も「不一致」も「一括読込みで不一致」となった場合である。
本文を流し読みしているときに、一括読込みに関する「環境によって数%の漏れが~」の部分は違和感を持ってチェックしておきたいところで、ここまで状況が整理されていれば、個別読み込みで数が一致するのは一括読込みで漏れがあった場合だと解答できる。
主語部分のずれから減点対象としたが、重要なのは「一括読込みで読込み漏れが発生したとき」の部分であるため減点は不要かもしれない。
・不一致になるケース
私の解答 | 容器返却書に記載された容器返却数が誤っている場合 |
---|---|
IPAの正答 | 容器返却書の容器返却数と実際の容器の数が誤っているとき |
配点予想:6点
得点予想:5点
【考察】
一致のケースと同様の前提で、誤りが発生した箇所を遡るように確認していく。
一括読込みで漏れがあった場合は一致するケースになるので違う、容器返却書からシステムへの入力は本文中で「システムへの入力が正しいことを確認して」の一文から外していいだろう。そうすると容器返却書の記入時点に遡れる。
返却容器に漏れがあったのか容器返却書の記入自体に誤りがあったのかは本文中から推測することはできないが「容器返却書の容器返却数」と「実際の容器の数」に差異が生じたケースであると推測できる。
振り返ってみて、正答の方が状況をより的確に表していると思い減点対象としたが、判断は難しい。
■(2)
本文中の下線②にある処理とは何か。30字以内で述べよ。
私の解答 | RFタグの書込みロックを外し、入力されている情報をクリアする |
---|---|
IPAの正答 | 書き込みロックを外して、容器情報領域をクリアする処理 |
配点予想:7点
得点予想:5点
【考察】
下線②は「RFタグは、容器から外して、再利用できるように、HTを用いてある処理を行う。」のある処理の部分。
前提としてRFタグは、固定のタグ番号を持ち、使いまわしを行う。
容器内容は容器情報領域に書き込み、その際にロックを行う。
ここまで情報が整理できれば、新たな情報を書き込むためにはロックを外して、入力内容をクリアするということを本文中の言葉を使い表現すればいい。
解答方針的には問題はない。容器情報領域という本文中の言葉を使用できていないこと、処理が問われる状況で「処理」で解答できていないという基本的なことができていないことから減点対象とした。
設問3
[販売管理システムの改修]について、(1)~(3)に答えよ。
■(1)
本文中の下線③のデータに用を表1中の属性名を用いて全て答えよ。
私の解答 | 製品コード、化学品名、ロット番号、充填日 |
---|---|
IPAの正答 | 受注伝票番号、製品コード |
配点予想:5点
得点予想:0点
【考察】
下線③は、「データ内容及び数が合っていれば」のこと。
普通に間違えた。[現行業務の内容]の製品ラベルに記述された内容より引用したが見当違い。
恐らくは、積込作業内でデータ内容を確認するシーンなので、ここでは製品と納品先を確認しなければならない。表1内でそれらを表すのが製品コード、受注伝票番号ということだろう。
軽く見直してもしっくりくる解答プロセスが思い浮かばなかった。受注伝票番号に関する説明がなかったりと完答するのがやや難しかったと感じたがどうだろか。
■(2)
積込・出荷処理について、「a」に入れる適切な字句を答えよ。
私の解答 | 出荷実績を計上する |
---|---|
IPAの正答 | 出荷実績を計上する |
配点予想:5点
得点予想:5点
【考察】
「a」は本文中では「HTの検品を完了した実績データを取り込んで、「a」。」となっている。
文章的には動詞のような語句が入ると予想される。
新システムに関する話での穴埋めは基本的に知識や経験から予測するのは危険で、通常は現行業務や旧システムの記述をヒントに考えるのがよいだろう。
私の解答プロセスは、現行業務の「積込・出荷」から抜き出し問題の一点読みで文章的に意味が通る「出荷実績を計上する」を抜き出し解答とした。
■(3)
使用期限警告処理について、「b」、「c」に入る適切な字句を答えよ。ここで「b」は本文中の容器状態区分の値を答えよ。また、「c」は表1中の属性名を用いて述べよ。
b | |
---|---|
私の解答 | 出荷 |
IPAの正答 | 出荷 |
配点予想:4点
得点予想:4点
c | |
---|---|
私の解答 | 充填日から製品使用可能日数後の日付 |
IPAの正答 | 充填日から製品使用可能日数後の日付 |
配点予想:5点
得点予想:5点
本文中では以下の通り。
「容器状態管理ファイルの容器状態区分の値が”「b」”で、「c」が本日日付の1週間後より前の日付である容器」
まず、顧客の下にある製品の使用期限に関する話なので、状態は「出荷」。これは本文より抜き出す他ない。
「c」についても、表1中の言葉を使用するという制限があるおかげで少し難易度が下がる。出荷された製品が期限切れになる状況を冷静に考えることができれば、解答が導けるが完全一致は嬉しい。
「充填日」と「製品使用可能日数」の言葉が使用された適切な文章になっていれば減点のしようはないだろう。
問2の自己採点合計
補正前 | 39/48 |
---|---|
補正後 | 40.6/50 |
【考察】
体感難易度としては「普通」。
問題文の形式としては、典型的なDBスペシャリストの出題形式に近い問題だと考える。
図表が少なめで本文が長いため、やや時間的な制限が強いと感じる。
設問としてもずば抜けた難問と言える問題はないものの、感覚で解答できる部分は少なく、適切な本文箇所を読み、状況が整理できていないと読み流すだけでは合格ラインを割る可能性がでてくると考えられる。
採点的には、50点満点にならなかったので、補正をかけた。
比較とまとめ
自己採点結果 | 80.6点 |
---|---|
本番試験の点数 | 87点 |
自己採点よりも本番試験の点数がやや高い結果となった。
普通に考えれば、減点とした箇所で減点がなかったが、0点とした箇所で途中点が加算された可能性が考えられる。
実際の採点ではどのようにされているか、この辺の判断は難しい。
問題によって調整が入る可能性もあり、多少のぶれは気にしてもしょうがないと思っている。
そのため、自己採点の精度としては現状で問題なしと考える。
一度の比較では傾向は決め切れないが、低めに出す分には問題はあまり感じず、現状の採点方法で8割がキープできるようになれば安定合格ラインに到達していると考えてよいと思える。
コラム
今回のシステムアーキテクト試験の中で気づき本番試験で活用した記述試験の特徴が一つある。
それは設問の語尾の「述べよ」と「答えよ」である。
「答えよ」は解答が本文中の言葉や知識で一意に定まる傾向が強い、数値や番号はもちろんのこと記述の場合もである。つまり、「答えよ」の記述式では本文抜粋で解答できる傾向が強いと言える。
逆に言えばこれは解答がぶれた場合に表現の違いでも一発でバツを食らう可能性が高いのでないだろうか。
「述べよ」は理由や状況、考えが問われ、ある程度ブレが許され本文中の言葉を完全にトレースしなくても意味が通れば十分にマルがつくのではないかと考えている。
本番試験で言えば、問2の設問3の(2)や(3)では十分に活用できた。
逆に問1の設問4の(2)では決めつけがあだになった節がある。
そのため完全ではなく、実際には問題ごとに考える必要があったり、そもそも語尾を見ずともはっきりとわかるケースがほとんどである。
しかし、個人的には時間のない場合の解答作成の指針を決める際には十分に活用できると思っている。